ヨーロッパ各国の政治的・経済的な協力を進め,ヨーロッパを1つの国のようにしようとする地域統合組織。“European Union”の略称で,日本語では,「ヨーロッパ連合」,「欧州連合」という。本部はベルギーのブリュッセルにおかれている。2017年12月現在の加盟国は28か国で,加盟国全体の人口は約5億人,国内総生産(GDP)合計額は約16兆ドルに達する(2015年)。
歴史上,ヨーロッパは戦争の舞台となってきた。とくに20世紀には2度の世界大戦の舞台となり,国土と経済がおとろえた。大戦がおこった大きな原因として,ヨーロッパ各国間の資源をめぐる争いや経済的な対立があった。これを教訓として,二度と戦争がおきないように資源開発や経済面での協力を進める考えが生まれた。これがEUの始まりである。
ECの誕生とEUへの発展
この考えのもと,フランス,西ドイツ(当時),ベルギー,イタリア,ルクセンブルク,オランダの6か国は,1951(昭和26)年に石炭と鉄鋼の共同管理を目的として,EUの原点ともいえるヨーロッパ石炭鉄鋼共同体(ECSC)を設立した。その後,ECSCの6か国は関税の撤廃や資本・労働力の自由な移動などをめざしてヨーロッパ経済共同体(EEC)を設立。さらに原子力の平和利用をめざしたヨーロッパ原子力共同体(EURATOM)を設立した。この3つの組織が統合され,1967年にヨーロッパの共同市場の創設をめざすヨーロッパ共同体(EC)が誕生した。その後もヨーロッパの統合は進み,1992(平成4)年には共通通貨の導入や政治統合(共通の外交・安全保障政策)などを規定したマーストリヒト条約が結ばれた。この翌年,ECはEUへと発展した。
EUの組織
加盟国国民の直接選挙によって選ばれた議員により構成される欧州議会や加盟国の大統領・首相・欧州理事会議長・欧州委員会委員長で構成される欧州理事会,欧州議会の承認を受けた委員で構成される欧州委員会などの機関がおかれている。
EUの政策
加盟国間での人(労働力・観光客)・もの(商品・サービス)・お金(資本)の移動を自由にしており,多くの加盟国間の移動ではパスポートを提示する必要がない。加盟国間の貿易で関税を撤廃し,自由貿易を実現している。1999(平成11)年には共通通貨ユーロが導入され,2002年からユーロ紙幣と硬貨の流通が始まった。加盟28か国中19か国がユーロを導入している(2017年12月現在)。
EUの課題
加盟国間の経済格差によって,さまざまな問題が生じている。EUでは移民を受け入れる政策がとられているため,経済的に貧しい東ヨーロッパの国々や中東の紛争地から多くの移民・難民が豊かな西ヨーロッパの国々へ押し寄せている。この影響で,移民・難民がもともと住んでいる国の人々の職をうばい,失業率が上昇するといったケースがみられる。また,移民に対する医療や教育にかかる国の負担が大きくなり,財政が圧迫されている国もある。この結果,移民の排斥をうったえる声が高まっている。2016(平成28)年にはEUの中心国の1つイギリスでEU離脱の是非を問う国民投票が行われた結果,離脱派が多数をしめ,その後イギリスのEU離脱が正式に決定した。他の加盟国でもEUからの離脱を求める声が根強くあり,EUの結束をどのように保つかが課題といえる。